日本で初めての国際貿易港として開港した函館は、外国の文化がいち早く取り入れられたハイカラな街です。
1階が和風、2階は洋風という和洋折衷の建物も多く見られ、その多くは1907(明治40)年の大火の復興期以降につくられたものです。
坂の多い街並みに、パステルカラーの擬洋風建築が建ち並ぶ様子はまるで外国にいるよう。
「和」と「洋」が絶妙に融合した建物は、和洋折衷コーデの着物でお散歩するのにぴったりの街です。
この記事では、着物でお散歩するのにおすすめな函館のレトロ建築を7棟ご紹介します。
1、旧函館区公会堂
重要文化財にも指定されている、函館のランドマーク的存在の歴史的建造物。
以前は柱はホワイト、壁はピンクという姿だったそうですが、1982(昭和57)年に修理工事が行われた際にイエローにパステルブルーという当初の姿に復元されました。
コロニアルスタイルの洋館で、保存修理のため2018年から2年半休館していましたが、2021年4月にリニューアルオープンしました。
2階のバルコニーからは、函館港と街並みが一望できます。バルコニー自体も、職人の高い技術が伺える装飾が美しいです。
130坪、高さ約6メートルの大広間にはシャンデリアがあり、優雅な雰囲気。ここではコンサートなどが行われていたのだそう。
ドレスなどハイカラ衣装の貸し出しもしているので、着物を持っていない方でも大正ロマンな写真を撮影することができます。
2、旧イギリス領事館
基坂を登っていくと 、左手にコロニアルスタイルの建物が見えてきます。
これは、函館が国際貿易港として開港した1859(安政6)年からユニオンジャックを掲げ続けた領事館。
数回の火災に遭い、現在の建物は1913(大正2)年に竣工し、1934(昭和9)年に閉鎖されるまで領事館として利用されてきました。
蔦の絡まる、ブルーの扉やアーチ窓。ブルーの地に植物柄の綸子の着物、帯はさわやかな水彩風の名古屋帯を合わせてみました。
初夏には庭園でバラが咲くのを眺められます。中ももちろん見学でき、当時の領事館の雰囲気を味わえます。
ティールーム「ヴィクトリアンローズ」では、アフタヌーンティーも楽しめるので着物でお茶したい方にぴったりです。
3、カトリック元町教会
屋根の上の風見鶏が目印の、カトリック元町教会。もとの木造教会が大火で焼失した後、1924年に再建されたものです。
高さ33メートルの大鐘楼が元町のランドマークの一つとなっています。
中は写真撮影が禁止されているのですが、ブルーの天井がきらびやかで美しいです。
聖堂の祭壇はローマ法王ベネディクト15世から贈られた、日本唯一の貴重なものなのだそう。
ゴシック様式の扉が荘厳な雰囲気。装飾が美しい扉と着物は、なんだか相性が良いように感じます。
4、大正湯
映画「パコダテ人」のロケ地になったことでも有名な「大正湯」は、ピンクの外観が印象的です。
洋風の銭湯というのは全国的に見ても珍しいです。初代は元船大工で、ロシアの建物を見よう見まねでこの建物をつくりました。
完全に洋風という訳ではなく、1階の扉が引き戸だったり、1階の窓や内部など和の要素も混じりあっています。
和洋折衷なのは建物だけではなく着物も。ピンクの外観と同じ赤系統の着物でお出かけしてみました。
5、中華会館
和洋折衷の建物が数多く残る函館ですが、その中でも珍しいのが中国様式の建物である「中華会館」。
外観のみ見学可能なのだけれど、ぐるぐる渦巻きの装飾がかっこいい扉や、壁のレンガの色使いなどが個性的です。
深緑色をした陶製の面格子など、中国の映画に出てきそう。
壁の雰囲気に負けないインパクトある、アバンギャルドな着物に、髪型は中華風のおだんごヘアにしてみました。
【中華会館 DATA】
住所:函館市大町1-12
アクセス:市電 「大町」徒歩約5分
6、相馬株式会社
市電路線沿いに建つ、モスグリーンの歴史的建造物。
今も「相馬株式会社」の社屋として、現役で使われている建物です。
1916(大正5)年築のルネサンス風の建物で、当時函館屈指の実業家だった相馬哲平が米穀商「相馬商店」として開業したのが始まりです。
落ち着いたグリーンの色合いは日本にはなかなか見られない、西欧の街並みを思い起こさせる色です。
この外観が函館の街並みによく溶け込んでいて、この建物は函館の街になくてはならない、ランドマーク的な存在となっています。
雪の結晶のような柄の着物に、赤い帯を合わせて。グリーンの外壁と相まって、クリスマスのようなロマンチックな色合わせにしてみました。
住所:函館市大町9-1
アクセス:市電 「末広町」徒歩約2分
7、旧函館博物館1号、2号
函館公園内にある、白くて可愛らしい歴史的建造物は、現存する日本最古の博物館。
五稜星のマークがある方が1号で、少し離れた方にある新しい方が2号です。
1号のみ見学したことがあるのですが、今の博物館と違うのは窓があること。
1号が竣工した1879年は自然光で展示を行っていたのですね。
着物で撮影したのは、1884年に竣工した2号の方。
現在は白い建物ですが、竣工した時は玄関のアーチと柱はブルー、窓枠はイエローといった色彩豊かな建物だったそう。
北海道の雪景色に映える建物ですね。
【旧函館博物館1号、2号 DATA】
住所:函館市青柳町17-4(2号)5(1号)
アクセス:市電 「青柳町」徒歩約7分
外観のみ見学可(4~10月の博物館本館開館日に、5名以上の団体で、2週間前までに事前予約をすると、一号の内部を見学可。)
着物でお出かけしたい、函館の歴史的建造物7棟を紹介してきました。
私の著書『北海道建築さんぽ 札幌・小樽・函館』(エクスナレッジ )では、函館はもちろん、札幌や小樽の歴史的建造物を紹介しているので、ご興味のある方はご覧下さい。